使者

「・・・先生」
・・・
「・・・ィラン先生、ディラン先生、大丈夫ですか?」
「ん?ああ、どうした?」
「それがですね。今例の成果を調べてたんですが、
10004の遺伝子がみつからないんです。どうしましょう。」
「どうしましょうって、そんなはずはない。死亡確認は?」
「それが、確認が取れないのです。
「確認が取れないのですって、サーチできるようにリング埋め込んでたんじゃないのか?」
「それが、、、どうも反応しないのです。この時代では。
もしかしたら、送り込んだ時代で故障したのでは?」
「そんなはずはない。あの時代にあれをはずせるやつはいないはずだ。
どういうことだ?」

俺は、最近考える。この計画を発案したのは、ウォン家のマルク氏であり、
自分が過去から来た、そういいはる男の話がもとだという。しかし、マルク氏が外出してる間に
彼はいなくなっていた。1通の手紙を残して。
3年後、この話を三島という科学者に伝えてください。彼は私の信頼できる友達です。
彼のひらめきで過去へ戻ることのできる機械を作るでしょう。
そしたら、過去を助けにきてください。私の本当の世界を。。。

俺には、いったいどういうことなのかわからない。
本当の世界だって?この世界も本当の世界。そういう意味じゃないのか?
今、何かが少しずつかわっている。歯車が、動いていない。
確かに、過去へ移動できる装置は発明された。
しかし、過去を助ける?これはいったいどういう意味なんだ。
俺の知らないところで、違う世界が動き始めていた。

三島という男は、何も教えてくれなかった。ただ、彼がなくなる前にこうゆったそうだ。
「この実験で、俺の役目は終わる。あとは、まかせた。。。」と。
当時、彼の助手をしていた俺の先生がそんなことをいっていた。
しかし、先生は急に行方不明になるし、仕方なく俺があとを引き継いだのだ。
それにしても、、、
「おい、ルーク、なにをしてるんだ?」
・・・
あいつめ、さぼってばっかりだな。だからへまやらかすんだ。使えないやつだな。

「せんせい、ディラン先生」
「おまえ、いままでどこにいってたんだ?」
「それが、例の10004について調べてきたんですが、妙なことがわかりました。
この時代にも、10004の生まれた形跡がないんです。」
「?!どういうことだ?」
「10004も、違う時代のものだったんです。これはいったいどういうことなんでしょう?」
どういうことだ、あのガキがこの時代の人間じゃないだって?
そういえば、顔が少し古い時代にでてくるようなタイプだったな。もしかして、、、
「あのガキを育てていたのは誰だ?」「たしか、10004は、おじいちゃんがどうのっていってました。
両親の話はいっさいしてませんね。このおじいちゃんは、どうも殺されたらしいんです。
ちょっと調べてきます。」

俺は時計をみた。たぶん、これはあるべくしてある現在のはずだ。
過去の歪みはあまりでていないはず。はやく修正しなければ、未来が大きく変わってしまうかもしれない。
いや、もしかして、もう手後れなのかも。
どうする。三島、おまえがつくったものは、なんて不完全なんだ。。。
「せんせい」
「どうした、何かわかったか?」「はい、死んだはずのじいさんがいきてました。」
「何?もしかして、あれをやったのか?しかし、あれは人工増加の原因になるから禁止されてるはずだろう。
なぜ、そのじーさんに適用されたんだ。」「それが、あのじいさん、なんとあのマルク氏のお世話をしていたとかで、
特別に措置がとられたらしいんです。で、10004についてきいたら、マルク氏がであった男の連れてきた、
子供だったらしいんです。そこで、じいさんはその男にこう頼まれたらしいんです。
あるとき、この子が子供たちにいじめられることがある。その時は助けてあげてくれ。
もしかしたら、おまえは死ぬかもしれない。しかし大丈夫だ。俺があとのことを保証しよう。
頼んだぞ。
そして、一つのペンダントをもらったらしいです。そのペンダントには、そのこの母親の顔が写っていて、
その写真をもとに母親を作り出したそうです。」
「まて、そのペンダントはいまどこにあるんだ?」
「じいさんが持ってるそうです。」「そうか、いまからあのがきを追いかけるぞ。じーさんをつれてこい。」
「え?どうするんですか?」
「ばか、そのペンダントである程度時代を特定するんだ。その男がもっていたものなら、きっと今のガキにたどり着く。
そんな気がする。」
「はい、わかりました。今すぐ準備にかかります。」

やはり、変わらないのか。
あの時点から、世界の動きは変わった。
もうひとつの世界、ある時から、違う道を選びはじめた。
1999年7月から。
出会ってはいけない2人を出会わせてしまった。
この出会いだけは、避けなければならなかった。
そのために、俺は未来へ行き、時の流れをかえるはずだったのに。
しかし、結局は同じなのだ。歴史は繰り返す、か。
すまない、やはりおまえは死ぬ運命なのだ。
俺にできることは、精いっぱいやった。あとは、おまえ自身でどうにかがんばってくれ。
必ず、何かが変わっているはずだから。

長い間、俺は気が付かなかった。
おまえが死んで、俺はずっと。生きているのが不思議なくらいだった。
あの鏡をみるまでは。
俺は、自分の顔を久しぶりにみた。その顔は、まるで死人のようだった。
でも、俺は生きているんだ。思わず笑いが込み上げてきた。
なんで、俺は、いきているのだ?俺も、俺もおまえを探しにいこう。
そして、自分自身をなくしてしまおうと思ったんだ。
手のひらを眺めて、そして力を込めて握り、鏡に向かってふりおろした。
すると、俺は鏡の中に吸い込まれたのだ。そう、そこには俺の知っている、いや似ている景色が。

俺は、ふらふら歩き回った。そこでお前を見つけた。
おまえは、俺の顔をみると驚いていたな。実際、俺のほうが驚いてたんだぜ。
でも、俺はなにもいわずに、話を聞いた。
俺は、死んでいたらしい。ははは、思わず笑ってしまった。
おまえは、子供を大事そうにあやしていたな。そのこは、俺にもなついてくれてた。
子供なんて、すきじゃない俺ですら、好きになったんだ。誰からも好かれる子に育つんだろう。
しかし、そんな時間もとうとう終わりがきたのだ。

その子供、そう名前はたしかゆーかっていったかな。
おまえの子供は。しかし、その子は今の医学では助からない病気に犯されてしまった。
おまえは、自分の命をひきかえに助けようとした。しかし、それも無駄だったんだ。
おまえは、医者にだまされ、臓器を売られ、そして、二度と俺に微笑みかけてくれることはなかった。
あの時、俺は心に決めたんだ。この子を、ゆーかだけは必ず助けて見せる、と。

しかし、あれは起こった。あれはたしか2000年、8月12日。
その日、俺はゆーかと海をみにいっていた。そこで、日の暮れるまで波の音を聞いていたんだ。
ゆーかもじっと聞いていたな。
夕日で真っ赤に燃えた海が、いきなり真っ黒になった。
そして、あたり一帯が強い風に包まれるように、一瞬にしておれたちは飲み込まれた。
俺は、ゆーかをしっかり抱きしめた。
気が付くと、あたりには何もなく、砂浜の上に、俺は転がっていた。
ゆーかは?俺は、つかんでいる手を放した。しかし、ゆーかはいない。
ただ、ゆーかの手だけを、俺は握っていたのだ。

俺は、途方にくれた。なぜ俺は助かったんだ?
でも、そんなことはどうでもいい。俺は、神に選ばれた、そう思った。
俺が、神。俺が、、、ならば、俺の力でゆーかをよみがえらせてやる。
気が付くと、足元に鏡があった。あの時、こちら側の世界に俺を連れてきた鏡。
これこそが、神の道具なのかもしれない。
そして、再びその中へと俺は、進んでいったのだ。
そこは、、、

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