思考

「ねー、きみ。」
僕は、その子に話し掛けていました。
でも、その子はボーっとしています。座り込んだまま動きません。
「ねー?」
でも、なんとなく気味が悪い。どうしてだろう?
こんな子、無視して早く家に帰った方がいいのかも。でも、
「大丈夫?」
ついつい声をかけてしまう。さすがに体調悪そうな人、見捨てられない。
すると、ほんのちょっとフラフラしながら立ち上がりました。

「君、名前なんていうの?」
その子は何も話してくれません。ぼーっと空を眺めています。
僕はしばらくそっとしておきました。
ちょっと肌寒い。月が、薄い明かりを放っています。
「あなたは、だあれ?」
ふと、その子が話し掛けてきました。僕は、、、「僕は、まりあです。あなたの名前は?」
しばらく沈黙です。何も話し掛けてくれないな。なんだか嫌だ。
「私は、ゆーか。まわり、誰もいなくなったみたい。」
ゆうかさんか、女の子みたいだな。んで、この子、なにしてるんだろう?
「ゆうかさん、どうして、そこにすわってるの?」
そして、また沈黙だ。どうなってるんだろう。でも、大丈夫そうなので、僕は帰ろうかな。
「いかないで」
帰ろうとした僕に、彼女は叫びました。

「君は、家に帰らないの?」僕は、普通の質問をしてみました。
「私は、帰るところがないの。だって、おじいちゃんが、おじいちゃんが、、、」
これはやばいな、そう思ったけど、僕はどうすればいいのかわからない。
どうしよう。警察?に連れて行く?でもな、近くに交番ないし。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
「君、家はどこにあるの?」
とりあえず、彼女の家に連れて行こう。そうすれば、なんとかなるだろう。
「家は、2-52-38-17665。そこに住んでるの。」
?何それ。どこどこ?そんな番号ばっかりいわれても。
「ねー、その番号って、どういう意味があるの?」
もう、全くわかんないなぁ。言葉通じてるのかなぁ?
「だから、2-52-38-17665。近くに、エイチタワーがあるとこ。」
あはは、だめだ、ここら辺にすんでる人じゃないみたい。
エイチタワーなんて、聞いたことないし。困ったなぁ。

夜も、だいぶ遅くなったしなあ。とりあえず、いろいろ聞いて考えよう。
「君ってさー、いくつなの?」
僕と同じくらいかな?でも、ちょっと年上っぽいけど。
「私は、10歳。あなたは?」
え、中学生くらいかと思ったのに、僕より若いんだ。
「僕は、12歳だよ。君も塾の帰り?」
でも、荷物とかもってないなぁ。散歩かなにかかな?
「私、病院で、おおきなも乗り物にのせられて、気がついたらここにいたの。」
病院?乗り物?気がついたらここにいたって、そりゃ、やばいな。
警察よりも、病院に連れていかないと。でも、どこの病院なんだろう?

えっと、さっきから話を聞いてると、この子は、違うとこにすんでる人っぽい。
でも、病院とか、乗り物とか、わけわかんないこと言ってる。
だいたい、病院って、病気がある人でしょ。乗り物ってなんだろう。
見た目、怪我してる風にはみえないから、大きな病院って感じでもないけど。
あ、もしかして、このこ頭がおかしいのかな?で、病院ってゆってるのは、
精神病院かなにかで。乗り物って、もしかしたら車とか?それとも、頭がおかしいから、
妄想とかしてるのかな?
こんな人と関わるの、やだなぁ。恐い。早く帰りたい。

「君、乗り物って、もしかして車?どこから来たの?」
彼女は、しばらく考えている。
「私は、車なんて古い名前の乗り物、乗ったことないよ。だから、どんな乗り物かわからないの。
車だったら、その名前くらい言える。」
え?車は知ってるのか。車じゃない。で、車が古い名前?自動車ってこと?
どういったらいいのかな?わけわかんなくなってきた。
「言ってること、わかんないよ、車が古い名前だって。どういうこと?」
また、しばらく彼女は考えていた。
「古い名前じゃないの?おじいちゃんがよくいってたよ。わしは好きなんじゃよ、
って。今では、このポンコツは環境に悪くて、ただの乗り物ができたんだって。
で、おじいちゃん、車っていうの乗ってたら、捕まったって。それから、、、」
車に乗ってて捕まる?スピード違反?でも、ポンコツ。わかんない、わかんないぞ。

「じゃあ、車にのらないんなら、何乗ってるの?」
彼女は不思議な顔で僕をみている。その瞳になんだか、吸い込まれるような気がした。
僕は、慌てて彼女から目を背けた。
「私は、いつもスカイボードに乗ってるよ。だって、普通、これじゃないの?
でも、いつもは歩いてるけど。おじいちゃんが、歩かなくちゃだめ、っていうから。」
スカイボード?そんな乗り物あったっけ?英語かな?
僕はちょうど英語の勉強してるから、えっと、スカイってのは、空だっけ?
で、ボードってのは、なんだろう?スノーボードのボードかな?
なんか、イメージ的には、スケートボード、あ、そっか、スケートボードが空?
浮いてるのかな?そんな乗り物はないか。
「もしかして、浮いてたりするの?」
そんなわけないか。
「え?普通浮いてるでしょ?」

あはは、笑うしかないね。ここまで話が通じないと。
もしかして、夢を見てるのかな?もう、夜だし。寝言?
「あっはっは、ははは」
僕は笑ってしまった。だって、なんか急に笑いが込み上げてきたんだ。
彼女は、ちょっと変な目で僕を見てる。
「ごめんね、だって、おもしろいこと言うんだもん。浮いてるって」
僕は、もう彼女と普通の会話できないな、そう思っていたのかもしれない。
「え?何いってるの?あなた、オカシイんじゃないの?普通浮いてるでしょ。
もしかして、スカイボードに乗ったことないの?」
僕は、ちょっとムッとしたけど、もう少し話を聞くことにしました。

「じゃ、それってどんな感じの乗り物なの?」
僕は、嫌な気持ちを押さえて、彼女に質問してみた。
「え?本当に知らないの?」
彼女は、そういうとちょっと座りこんでしまった。
この道を通る人は、誰もいない。あたりは暗い闇の中。
「私もあんまりしらないんだけど、ある人がね、空を飛びたいな、って言ったらしい。
その人は、とても空が好きで、そしてある時、同じことを考えてる人がいたんだって。
そして、そこで自分の考えを教えると、教えた人が自分の技術を提供してくれたんだって。
で、そこでできたのが、スカイボードっていってた。おじいちゃんが話してくれた。」
空を飛びたいな、か。誰もが夢を見ることだ。
でも、本当にそんなことできるわけないよ。テレビとか空想のなかだけじゃん。
「そんなもの、今ないじゃん。どこにも。そんなことゆったって、わかんないよ。」
僕は、胸に何か感じたような気がした。でも、すぐにはわからなかった。
「今は、ないみたいね。ほんと、静かだね。ここ、どこなの?
こんな、何も知らない人がいるって、ここ、って、まさか、、、」

「いててっ、何するんだよー」
あれ?なんで痛がってるんだろう。
「痛いの?おっかしいなぁ。」「おかしくないって、普通耳引っ張られたら誰だって痛いよー」
だって、これって夢の中かと思ったのに。
「だってさ、あなたの顔って、私みたいな感じだかし、話も通じないからてっきり。。。」
この子、とうとうおかしくなっちゃった。やばいなぁ。
「話が通じないけど、顔は普通こんな感じでしょ?」
顔、僕の顔ってそんなにおかしくないと思うけど。どういうことだろう。
「だって、私いっつもいじめられたよ。みんなに変な顔だーって。
あと、髪の毛もおかしいっていわれてた。でも、あなたも私みたいな顔だし。
だから、だから。。。」
変な顔って、、、そっかなぁ?
「君の顔、変じゃないよ。いいと思うけど。。。」

ここが夢の中じゃないとすると、まだ病院で検査中?
あ、そういえば、あの人たちが何かいってたなぁ。
なんだったっけ?研究?実験?そんなこといってたなぁ。
てことは、これはもしかして、なにかされてるのかな?
私は、どうなっちゃうんだろう。
そういえば、顔。顔がへんじゃないって?どういうこと?いままで嫌な顔をされてきたのに。
あなたおかしいんじゃないの?でも、嘘を言ってるようには思えないし。
私の顔にも似てるし。どうすればいいんだろう。困ったなぁ。
でも、この人の顔をみてると、なんだか安心する。

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