終神

僕は、いきなり光につつまれたんだ。
まるであのときのように。
もしかしたら、あの時から光につつまれたままなんだろうか?
あまりに強い光につつまれて、僕は気が遠くなりかけた。
僕の体が光に解けているようにも思えた。
その中に、あの子の姿を見かけた。
ゆーかっていうこ。そして・・・

「そろそろ窓の外が見えるころですよ。」
三島さんの言葉で目がさめた。
少し眠っていたみたい。
この時代の乗り物にのっています。おじいちゃんがゆってたやつ。
ガタガタってなってます。最初気分が悪かったけど、なんとか慣れました。
もっと乗り心地のいい乗り物を作ればいいのに。
音も少しうるさい気がします。私の時代にないのがなんとなくわかりました。
外は、緑がいっぱいです。あっちの世界は確か大きな木一本しかみなかった気がします。
空はとても青く、雲がひとつもみえません。
太陽が燦燦と輝いています。
久しぶりに自然を感じた気がする。
あの世界に戻れば、もっと生きていることを感じられる。
私はもう強くなりました。もう誰にも生きることを邪魔されはしない。

キキッ・・・バタンッ。
「つきましたよ。こっちの世界とももうお別れですね。
ゆかりさん、いいですか?あなたにこの剣を渡します。
外にでたらすぐに壊してください。そうすれば、もう二度とあちらの世界には戻れません。
それは、たとえどの時代にいっても、決して修復することはできないのです。
過去だろうと、未来だろうと・・・」
わたしは、少しの間剣をみていましたが、お母さまが見守ってくれているようで、
剣を強くにぎりしめました。
三島さんが鏡にさわり、なにやらぶつぶつ唱えています。
「いきますよ」
私たちは窓の外に投げ出されました。

そこは、あのときのまま、大きな木の下でした。
青々と茂った、まるでこの世界の全てを見ているような、
そんな存在にみえました。
そこには、あちらの世界と同じように太陽に照らし出されている鏡がありました。
あまりの輝きに、一瞬目を閉じてしまいました。
私は手にしている剣を空高く振り上げました。
ちょっとだけお母様のことを考えました。
胸のあたりが熱くなりました。
私は思い切り剣を振り下ろすと、鏡はもろく崩れ去りました。
キラキラと破片が散らばっていきます。
風に吹かれて、今ではもう跡形もありません。
「それでよかったんですよ。この仕事はあなたにしかできません。
ほかの者がいくら窓を塞ごうとしても、その剣はあちら側へ突き抜けるだけで、
なんの意味ももたないのです。
今、ここで使われるために、その剣は存在していたのですから。」

しばらくの間、空を眺めていました。
ディランはなにやらあたりをうろついていました。
三島さんは、ただ座っているだけです。
こっち側も、空の色はかわりません。蒼い空に薄く月がのぞいています。
周りは海です。これからどうするのでしょう。
「あいつ、いないな。ながされちまったのかな。」
ディランはぶつぶつゆっています。
「ちゃんとしとめたはずなんだけど、ちゃんと確認するまで安心できないな。
おい、三島、あいつのこと知らないか?」
「あの人は、あっちの世界にいますよ。あなたをおっかけてきてました。
でも、こちらで処分しました。あなたには生きていてほしいので。」
三島さんは少し苦笑いをしていました。
「もう、心配ないでしょう。同じ失敗を繰り返さないように。」
ディランは少しため息をついて、わたしを眺めていました。
「これからどうするんだ?」
「もうすぐです。もうすぐ船が迎えにきます。
いや、迎えにくるというより、この時間にここを調査する船です。それに乗っていきましょう。
あ、きたみたいですね。」
そういいおわると同時に、大きな船が私たちの前に現れていました。
それは、私たちを捕まえていた人たちが乗っていた船です。
この船から脱出したのに。。。
「これに乗るんですか?」
ディランはなんとも思ってないみたいです。
「どうしたました?」
三島さんは、不思議そうにわたしをみていました。
「さあ、いきますよ。」
「でも、これ・・・」
私がいいかけると、三島さんは首を横に振りました。
三島さん、あなたは何を考えているのですか?

私たちは船にのりました。
ディランは何も覚えていないみたいです。
自分から乗り込んでいきました。
「三島さん、あの・・・」
今度は、ちゃんと答えてくれました。
「これはですね、あなたが乗ってきた船でもあり、
今では違う船になっているんですよ。だから、心配しないでください。
大丈夫です。以前のようなことはおきません。
これから、無事にあの場所へといくことができるのです。
そう、終神がいらっしゃるあの場所へ。」
そういうと、私ににっこり微笑んでくれました。
「任務はうまくいったようだな。」
私には、このとき三島さんのいっていることがよくわかりませんでした。
「簡単にいうと、時間を巻き戻してるんですよ。」
そういって、動き出した船の先をみつめていました。
私も一緒に船の先を見渡しました。そのとき、一瞬私の未来が見えたきがしました。

なんだか胸がどきどきしてきました。
船は月へ向かっているようです。月・・・
あの時も月へ向かう途中でした。
三島さんがいうように、時間を巻きも度しているのなら、
月へ行く途中でまた船が戻っていくんだろうな。
でも、、、どうして時間を巻き戻しているのにわたしがいなんだろう。
ディランも。。。
三島さんがのってるから、少しかわっているのかな?
そんなことを思いながらうとうとしていました。
月が近づくにつれて、胸のペンダントが暖かくわたしを包んでいるようでした。
「おかあさん・・・」
そういいながら、私は眠りの中へと誘われました。

わたしのかわいいこよ。あなたにかこくなことをさせてしまいました。
わたしをゆるしてください。
あなたには、ふつうにせいかつしてほしかったのに。
わたしのせいで、あなたにもこんなおもいを・・・
わたしのだいでおわりにしたかったのに。
なぜ、わたしがあのひとにえらばれたのか。
それはね、わたしがじゅんすいにあのひとのちをひいていたからです。
わたしのとおいとおい、きがとおくなるほどとおいははが、あのひとなのです。
そして、そのははがしぬとき、すべてがおわるのです。
ははいがいは、みんないなくなりました。
しぜんにもどったのです。
わたしには、うまれたときに、それをおこなうようにあたまのかたすみにしれいがありました。
だから、わたしはははにあいにいったのです。
わたしたちのおもいを、うけとってください。

私はお母さんに会いました。はっきりとわかるその顔は、とても優しそうでした。
「お母さん」
最初で最後、甘えてみました。
お母さんは、私が甘えるとにっこり笑ってだきしめてくれました。
みんながまってるよ
この言葉だけが耳に残っています。
みんなが待ってる。
飛行船は、もう地球についていました。
あの時と同じ。あの場所。あの家。
真っ暗闇の中に、一筋の光がさしています。
ペンダントが青白く光った気がしました。
体中が熱くなった気がします。
もうすぐ、帰るからね。

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