継続

星をみていると、胸がいたくなります。
この世界の星も、わたしが昔みた星とは違うのでしょうか。
ああ、あのころに戻りたい。
なにもしらない、あのころに。
なんだか、涙がでてきました。
わたしには、なにがなんだかさっぱりわかりません。

ディラン

少しずつ、わたしの記憶がよみがえってきました。
そう、わたしはディランをしっています。

あれは、月がとてもきれいな夜でした。
そう、満月だったかな?
私は、ディランと何人かに囲まれていました。
といっても、私とディランともう一人の人は鎖につながれていたのだけど。
行き先は、どうやら月のようでした。
でも、あのときなぜか安心したきがします。
月の光を浴びていると、心が開放されているようでした。

月光浴

小さいころ、月の光につつまれて眠っていました。
あの時、おかあさまに髪の毛をさわってもらって落ち着いていたんだ。
私の長い髪の毛を。
そのときのおかあさまの目を思い出しました。
とてもきれいな青い目をしていました。

突然月への船がゆれはじめました。
「おい、おまえ俺とにげないか?」
ディランは私にそういいました。
「俺のいうことをきけば、おまえも逃げることができるんだぞ。」
私は、これから先のことなんてまだ考えていませんでした。
「おまえ、このままだとやつらに殺されるぞ。それでもいいのか?」
殺される、その言葉を聞いたときおじいちゃんのことを思い出しました。
おじいちゃんが命をかけて助けてくれたこの命、大事にしたい。
「いやだ、私はまだ死にたくない」
「だったら俺のゆうことを聞くんだ」
そういって、ディランは私に計画を打ち明けました。

彼のいうには、彼のベルトにはテラという素材を使っていて、
それは自分で開発したそうですが、それは自由に形が変わるそうです。
そのベルトに、護身用に小さなミサイルをつけていたのです。
「ちっ、ルークのやつどこへつれられていったんだ。」
「ルークって、もしかしてもう一人のおじさん?」
「しってるのか?」
「さっき、あの怖そうな人がその人を自由にしてたよ。」
ディランはしばらく考えていました。
「作戦を早く実行にうつさないといけなくなったみたいだな」
そういって、ディランは私にミサイルを使うように言いました。
「大丈夫だ、やつらに向かってなげるだけだ。しばらく麻痺する。
そのあと、この鎖さえはずすことができれば、俺たちははれて自由だ。
なに、元の世界はおれがちゃんと連れていってやる。」
私は、そっとミサイルを手にしました。
とても小さくて、こんなものが頼りになるのだろうか?
まるで、子供のおもちゃのようでした。

私がミサイルを投げると、一瞬にして室内が白い煙に覆われました。
私はディランにゆわれたとおり投げてすぐに眼をつむり、口を抑えていました。
しばらくして、(ディランにはできるかぎり息をとめろっていわれてたので)
もう息ができなくなって、眼をひらきました。
するとディランはまだ肩で口をふさいで、眼をつむっていました。
私は、少しクラッとしましたが、なんとか動けるようです。
「ディラン」
私はそっと呼んでみました。

ディランはそれでもしばらくは動かないでじっとしていましたが、
そっと立ち上がり、近くの見張りの眼をひらいて、鍵をみつめさせていました。
一時期眼球で照合するというのが一般化したそうですが、
犯罪者が容赦なく眼球をえぐる事件が続いたのでずいぶん前に禁止になったはずなのに。
「どうしてわかったんですか?」
私はディランに尋ねました。彼はけだるそうにこっちをみると、
「こいつの目はな、眼球がやけに小さいだろ?登録するときに、眼球にキーコードをやきつけるんだ。
そのときに、旧式はこういう症状になる。新式を発表する前に中止になったからな。」
カチリといって、ディランの鍵がとれました。
「おまえもはやくこっちにこい。のんびりしてられないんだ。」

船の行き先を地球へと戻しました。途中自動操縦にして、脱出ボートで外にでました。
海面が延々と続いていました。
どこまでつながっているかわかりません。
とても長く、海しかないようにも思えました。
私たちは、海におちました。
海の中までボートが沈んで行き、しばらく海の中をさまよっていました。
ふとディランが「あっち側へいく」そういって進路を決めました。
その島には、1本の大きな木がありました。その根元に少し盛り上がったところがあります。
ディランはその場所を掘り返すと、等身大の鏡が埋まっていました。
「いいか、どうやらこの世界にはなにもないようだから、あっちの世界から元に戻る。
おまえは俺の言うとおりにしてればいいんだ。後少しだ。俺の記憶が性格なら。」
そういって、鏡になにやら呪文のような言葉をとなえていました。
すると、鏡が輝きはじめ、すーっとすいこまれかけていました。
そのとき、一発の銃弾が響き渡りました。

ディランは打たれました。彼の服を鮮血が染めています。
ディランは崩れるように、私に倒れこみました。
「おまえだけは、先にいけ。もうあっちにいける。オレはあとからおいかける。
おまでだけはいくんだ。助かりたいんなら・・・」
そして、私は鏡の中へと入っていったのです。
入れました。
とても不思議な感覚です。
まるで、水の中にはいるような、水のそとへ出るような。
息苦しいような、生き返るような。
私は、鏡に吸い込まれるまえに、ディランをみました。
彼は、どこからか銃をとりだして、相手をねらっていました。
「ルーク・・・」
ディランは、ねらいをさだめて一発だけうちました。
相手は胸をおさえながら、倒れこみました。
ディランも倒れました。

私は、そのあとのことは覚えていません。
気が付いたらここにいました。
いつ気が付いていたのかもわかりません。
もしかしたら、さっき気が付いたのかもしれないし、
ずっと昔から気が付いていたのかもしれません。
いや、最初から気を失っていなかったのかもしれません。
ただ、鏡の中にいることはわかりました。
そう、ここは鏡の内側。
別の世界。
もうひとつのわたしの居場所。

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