名前

目をつむって、深呼吸をしました。
「すぅー、はぁぁぁーーー」
そして、ゆっくりと意識をあわせていきました。
自分の感覚を、まわりと同じようにゆっくりゆっくりと。
やがて、全部の感覚がまわりと同化してきました。
自分の動きがやけにのろく感じます。
手をあげるのに、体が重くなったようにうまくあがりません。
目がとても痛くなってきました。
頭ががんがんします。
はきけがします。めまいが・・・
きぶんが、わるいです。だれかたすけてください。

「だいじょうぶですか?」
わたしは、少しぼーっとしていました。
「だいじょうぶですか?」
だいじょうぶじゃないです。
あたまがいたい。あたまが、われそうです。
「あたまがいたいです。どうしたらいいのですか?」
目のなかになにかがはいりこんでるような気分です。
わたしのなかで、なにかが育ちはじめてるみたい。
へんな生き物があたまのなかでぐるぐるまわってるみたい。
「だいじょうぶですよ、それはさいしょだけです。あとから楽になってきます。」
そんなことをゆわれてしまいました。
なにがわかるっていうのでしょう。わたしにはわかりません。

ずいぶん楽になってきました。
相手の顔がはっきりみえてくるまでにしばらくかかりました。
まだ、すこしぼんやりしています。
わたしのまわりをうろうろしていました。
なにかデータをとっているようです。
少し、静かにしてほしい気分です。
「なにをしているんですか?」
「先生にたのまれていたので、データをチェックしているんです。
いま、すべてが作動していますが、いきなり停止してしまうかもしれません。
だから、異変が起きるとすぐに対応できるように、チェックしているんです。」
わたしは、不思議そうに行動をみていました。
「なにに異変がおきるのですか?」
「あなたにですよ。」

わたしは、だぁれ?

あなたは、わたしたちにつくられた、かみです。

かみって?

そのむかし、そらとうみとしかないじだい、その2つのあいだにたいりくをつくり、
わたしたちにんげんをつくり、このだいちにうみおとし、
いくつものわざわいやこうふくをもたらした、できごと。
それをわたしたちは、かみとよんでいます。
あなたには、そのちからをさずかったのです。

どうして、わたしがかみなのですか?

あなたは、さいしょにつくられたかみ、さいごにつくられたかみ。
この2つのかみにせっしょくをしてしまったんです。
あなたは、その2つのかみのいしをうけついでいるんです。
あなたがうまれたこのばしょ。これはさいしょのかみがつくりだしたほんとうのせかい。
かがみのうちがわ。
むかし、かみはこのかがみのせかい、そしてそのせかいにはいるためのことば、
さいごにそのかがみのせかいをこわす、つるぎをおつくりになりました。
あなたはうまれてまもなく、こちらがわのせかいにつれてこられたのです。
あなたのおかあさまによって。
そして、わたしたちがせわをすることになりました。
あなたのおかあさまは、どうやらさいしょのかみにえらばれたのです。
しかし、こちらからそとのせかいにはでられないはずでした。
でも、なぜか、あながあいてしまったのです。
あなたという、まねかれざるきゃくもいっしょにまよいこんでしまったからです。

おかさまは?

すでになくなりました。
もう、すでにひんしのじょうたいでした。そこへわれわれがたすけようとてをさしのべたのですが、
あのかたは、それをきょぜつされました。ただ、あなただけはたすけてほしいと。
わたしは、あちらがわへでることばをしりません。
あなたも、もうあちらがわへもどることはできないはずでした。
しかし、あのおとこがやってきたのです。

あのおとこって?

あなたのとおいきおくにあるおとこです。
あのおとこは、さいごにつくられたかみのししゃだったのです。
はじめから、こちらがわのせかいでうまれていたのなら、
あのさいごのかみもそんざいにきづくことは、ぜったいにありませんでした。
しかし、あなたたちは、あちらがわのせかいでうまれました。
それは、つくられたせかい、にせもののせかい。
さいしょのかみは、いつしかこちらがわのせかい、かがみのせかいにはいりこんでいました。
そして、つくりもののせかい、あちらに、さいごのかみがうまれたのです。
どちらも、じかんをもうごかせるのですが、
この2つのかみはへいこうせん、つまりまじわることはなかったのです。
ちかづこうとおもえば、あいてがはなれ、にげようとおもうと、おいかけられる。
そこで、いつしかじぶんのかわりのものをつくろうとおもいました。
それで、あなたのそんざいがひつようになったのです。
なぜなら、あなたは、この2つのかみをけすためにわたしにつくられているのですから。

わたしのなまえは、なんていうのですか?

あなたのなまえですか?
あなたのなまえは、ゆかり。おかあさまはあなたのことをよく、ゆーかとよんでいました。
いみは、さいしょのかみとさいごのかみをつなぐもの。
ゆかり。
なんとひにくなことでしょう。あなたはうまれてくるまえからこうなるようにみちびかれてたのかもしれません。
さいしょのかみは、せんせいは、いまさいごのかくにんをしています。

さいごのかみって?

さいごのかみは、あなたがよくしっているひとです。
せんせいからきいたところ、あなたがさいごのかみにえらんだそうです。
いや、そういうふうに、せんせいがプログラムしたのかもしれません。
もしくは、あなたにえらばせるようにさいごのかみがしむけたのかもしれません。
でも、もうおそいのです。あのおとこにプログラムがわたってしまったのです。
あのおとこですよ、まりあっていう・・・

なにか夢をみていたような気分です。
頭のなかにすーっと意識がはいってきたような。
そんな感じをうけました。
少しずつ、意識がはっきりしてきます。
わたしのなまえは、ゆかり。
さいしょとさいごとをつなぐ存在。

次へ

戻る

フォローする