わたしが目を覚ましたとき、レイナ姫のそばにいました。
レイナ姫は目覚められ、涙を流しておられました。
皆は喜びましたが、レイナ姫は三日三晩泣き続けました。
姫は、知っておられたのです。シンジ様が魔王との戦いでいなくなってしまったことを。
しかし、レイナ姫は、再び笑顔を取り戻しました。
この国の人たちに笑顔を取り戻すために。
この国の者たちも、シンジ様のことを思い同じ気持ちだったからです。
わたしは、シンジ様を探す旅にでました。
よっちゃんを探しましたが、彼もどこにいるのか不明でした。
わたしは、世界のいろいろな国を訪れました。
しかし、シンジ様は見つかりませんでした。
ふと、シンジ様と旅をした日々を思い出しました。
とても楽しい旅でした。
よっちゃんは、いつも陽気で、シンジ様に冗談をとばしていましたし、
それを受けたシンジ様も、よっちゃんを殴り飛ばしていました。
そういう関係で、わたしもうち解けることができました。
「こいつ、ばかだろ?でもそこがいいんだよ。」
って、いっていたのを思い出します。
一度、よっちゃんになぜシンジ様と一緒にいるのか聞いてみました。
「それは、あれだよ。うん。なんでだろう。勇者しんじだからかな?」
と、意味不明なことをいっていましたが、
きっと、シンジ様のことが好きなのだと思います。
そういえば、よっちゃんは犬がとても好きで、よく犬を鍛錬しているといっていました。
実際、旅の途中、民家にいた犬と戯れていましたが、
よっちゃんは小さいからか、犬におそわれて、ガブリとかみつかれていました。
よっちゃんは、ぽつりと「トムソーヤー」と言葉を吐き捨てました。
もしかしたら、よっちゃんの方が、犬に鍛錬されているのではないかと思うは、
わたしだけでしょうか?
シンジ様は、猫が好きなようでした。
よっちゃんが、「ねこのどこがいいんだよぅ。あいつらは俺たちを小馬鹿にしてるんだ。
呼んだって、ちらっとみるだけで、あとは知らんぷり。
やっぱ、犬だよ犬。ほら、俺のトムソーヤなんて、俺が帰ってくるだけで、
わんわんいって、近寄ってくるんだよ。
あまりに喜びすぎて、がぶがぶ、俺の身体を噛みつくくらい。」
というと、すかさず、「それは、本当にすかれているのか?」と痛いところをつかれて、
よっちゃん少しうなだれてしまいました。
が、ここではよっちゃんの話はおいといて。。。
シンジ様の猫、通称ホワイトドラゴンは、シンジ様になついているらしく、
呼べばすぐにやってきました。
そう、途中でシンジ様が、「今から呼んでみようか?」というと、
「ホワイトドラゴーーーーン。」と大きな声で叫びました。
すると、どこからともなく、ドドドドドッと地響きが聞こえたかと思うと、
にゃーーーーーーーーーーーって叫びながらやってきました。
あのときは、さすがにびっくりしました。
シンジ様は、ホワイトドラゴンと共に戦ったお話をしてくれました。
なんでも、道に迷ったときに、ホワイトドラゴンに何度もたすけてもらったこと。
雪山で遭難したときも、ホワイトドラゴンのおかげで助かったこと。
洞窟にはいっても、暗いのとじめじめしているのと、コウモリにびっくりしたとのことで、
たいまつを落としたときも、ホワイトドラゴンに助けてもらったこと。などなど。
シンジ様は、京の都で迷子になるくらい方向音痴らしいのですが、
ホワイトドラゴンのおかげで、なんとか無事に生きてこられたらしいです。
「ありがとう、ホワイトドラゴン。」といって、
軽く頭をなでようとしたとき、あまり機嫌がよくなかったのか、
にゃーーーっていって、爪ひっかきをされていました。
呼んだらまず、ご飯をやらなきゃいけないらしいです。
どうして、ホワイトドラゴンはシンジ様をみつけることができるのですか?と質問してみると、
「あいつは、俺のにおいでやってくるんだ。」といっていました。
猫って、そんなに嗅覚が聞くのでしょうか。
「あいつは特別だからね。」
シンジ様は、かなり訓練させていたようです。
猫なのに、二足歩行をさせるため、前足を抱えて、歩かせてみたり、
ボクシングをさせるように、シュッシュッてパンチさせてみたり。
猫にそんなことをしても・・・とわたしは思うのですが。
でも、結果はでるようですね。
ふつうの猫とは、目つきが違います。
なぜか、獲物をねらう目が、ギラギラしているのが、
誰よりも、一番強くなれと願われて育てられた結果なのでしょうか。
流れ星がきらりと光りました。
ああ、早くシンジ様がみつかりますように。
レイナ姫が心から笑顔になれますように。
あたりは、もう真っ暗です。
女の夜道は気をつけなければなりません。
どのくらい旅をしたのでしょうか。
わたしは、シンジ様を捜すのなら、ホワイトドラゴンが一番だということに気づきました。
でも、ホワイトドラゴンがどこにいるのか検討がつきません。
やはり、よっちゃんを探さないといけないようです。
ホワイトドラゴンとトムソーヤは仲がいいんだと、よっちゃんがいってました。
信憑性はまゆつばもんですが。
さて、よっちゃんを探すには・・・どうしたらいいのでしょう。
そこで、一ついいことを思いつきました。
よっちゃんは、だいの骨董品まにあです。
なんでも、昔忍者の訓練をさせられていたということで、
手裏剣がとても好きだというのです。
そこで、「世にも珍しい光る手裏剣がほしいかた、
先着一名様に差し上げます」という張り紙をだしてみました。
もちろん、先着なんて関係ありません。
張り紙を出して、5分もしないうちに、よっちゃんが現れました。
「はぁはぁはぁ。光る手裏剣、まだある?」
そういうと、よっちゃんはわたしをみつけてびっくりしてました。
そして、すぐにぷりぷり腹を立てて怒って帰ってしまいました。
なんだ、手裏剣いらないのかぁ。
しっかり後をつけてみました。
よっちゃんは、へんぴな村に戻っていきました。
まだ、魔王との戦いの傷が完全には癒えてないようで、
家に帰るなり、ぜぇぜぇいいながら眠ってしまいました。
よく考えると、この人もいちお世界のために貢献したんだなぁ、と思います。
ほんとに役にたったのかどうかは、不明ですが。
あ、そういえば、私がさがしているのは、よっちゃんではなく、
よっちゃんの犬。トムソーヤです。
あたりを見渡すと、あ、いました。人間のベッドに、
ぐわぁって大の字になって眠っています。
ねぇねぇ、トムソーヤ、お願いあるんだけど。
ホワイトドラゴンがどこにいるのか、わたしに教えてくれない?
一瞬、がぁ~って口をあけてわたしに噛みつこうとしましたが、
相手がおんなのこ?とわかると、はぁはぁいいながら、ぺろぺろなめてきました。
なんか、やらしい犬です。
ちょっとくらいトムソーヤがいなくても、よっちゃんはだいぢょうぶでしょう。
というより、ちゃんとベッドに寝れるからそっちのほうがうれしいのかも?
だって、よっちゃんは、ベッドの下に眠ってるんだもん。
トムソーヤは、涎をだらだらたらしながら、はぁはぁいって走り出しました。
どのくらい走ったでしょう。
ワオォ~ンって丘の上で叫ぶと、ダダダダダッというものすごい地響きがして、
にゃーーーーーーーっと、ホワイトドラゴンがやってきました。
なんかようだにゃー?ってゆったかどうかわからないんですが、
わたしの顔を見て、はてなマークがいっぱいです。
ひどいわ、ホワイトドラゴン、私の顔忘れたの?といってる場合ではありません。
「ねぇねぇ、あなたのご主人、シンジ様がどこにいるのか見つけてくれない?」
ちょっと、プイっとしていましたが、一度ホワイトドラゴンのことをみてたので、
ちゃんと餌をあげました。
ホワイトドラゴンは、鰹節が好きなようです。
ぺろりとたいらげると、満足したのかスヤスヤ眠り始めました。
おいおい、先に仕事をしろよ!って軽く狭い額につっこみいれて起きました。
うぎゃって目が覚めると、にゃーーーーっていって全身の毛を逆立てましたが、
餌をもらったという恩があるので、しょうがないなーと思ったのか、
すごい勢いで急に走り出しました。
ていうか、普段はホワイトドラゴンなに食べてるんだろう?
もうすぐシンジ様がみつかる。
身体に羽が生えたように、飛ぶように後をついていきました。
さすがシンジ様に鍛えられただけはあって、
ホワイトドラゴンの走りはすごいです。
なんとかついていくのがやっとでした。
途中、餌をくれ!という目で見られたので、鰹節をちょこっとやって、
そして、再び走り出しました。
満月がきれいに顔をだした2日目の夜、やっと到着しました。
ホワイトドラゴンは、ここだといわんばかりで、プイっとしていました。
もうかえるかんね?って目でにらんで、だだだだっーーーーという地響きを残して、
去ってしまいました。
そこは、わたしには見覚えのある場所でした。
この場所は・・・
ここは、以前シンジ様と伝説の武具を取りに来た場所です。
このなにもない、生命が何一つ存在しない廃村。
魔王が消えても、今尚草木がはえる気配がありません。
わたしも、旅の途中、一度ここによってみました。
しかし、そのときも、今のようにだれ一人といる気配がありませんでした。
ホワイトドラゴンのやつ。
わたしはそう思い、あの井戸のそばまでやってきました。
ん?
井戸のそばに、小さな苗木が植えられていました。
このなにもない廃墟にどうして?とわたしは思ったのですが、
そのとき、その苗木のそばに落ちているものを見つけたとき、
わたしは思わず叫びました。
シンジ様!!
そこに落ちていたのは、レイナ姫がシンジ様にわたされた、
ライオンを象ったペンダント。
わたしは、急いでそれを姫のところまで持ち帰りました。
姫は、そのペンダントをみて涙を流しました。
わたしは、姫をその場所まで案内しました。
そして、わたしがそのペンダントを拾った場所まで案内すると、
「しんじ」と苗木に向かって叫びました。
そう、この苗木こそ、シンジ様に違いありません。
レイナ姫は、こっそり国を抜け出しました。
国中は、大変な騒ぎになりました。
しかし、姫はシンジ様と一緒にいることを望んだのです。
この廃村は、だれも近づくことはありません。
わたしは、ともにレイナ姫のそばにおりました。
シンジ様は、姫の愛情を注がれて、すくすくと大きくなっていきました。
「お姫様はね、王子様にキスをしてもらうと幸せになれるんだって。」
姫はわたしにそうおっしゃられました。
「ほんとは、一緒にいるだけで幸せなんだよ。」
姫はいつもにこにこしていました。
「もし、王子様が眠りについてしまわれたら、
私が、王子様にキスをして目覚めさせてあげるの。」
姫は、目を閉じ、胸に手を当てました。
「しんじ、この傷はどうしたの?こんなに深く傷ついて。」
シンジ様(成長した木)の胸の部分に深い傷がざっくり開いていました。
レイナ姫は、そこをそーっとなぞりました。
「なんだか、ここをなぞっているとしんじのことを思い出すわ。」
姫は、そんなにもシンジ様のことを愛されているのですね。
「わたしも次に生まれてくるときは、しんじのそばに咲く花になりたい。
あなたのそばにいつまでもいられるように。」
400年後
「しんじったら、どうしたの?こんなところに私を連れてきて。」
こんなところっていうなよ。ここは、俺にとっては大事な場所なんだ。
「ごめんなさい。でも、れいうれしいな、しんじが大事な場所につれてきてくれて。」
れいは、にこにこ俺にほほえんでくれた。
そう、ここは大事な場所なんだ。
ずっとずっと、俺たちを見守ってくれた。
もう、あいつの恨みも収まったんじゃないのかな。
「あいつの恨みって?」
ううん、なんでもないよ。
ここ、れいにしっておいてもらいたかったんだ。
俺のお姫様に。
「えへへ。もう、しんじってば。」
しんじ、しんじ、しんじ。
いっちゃだめだよ。れいをおいて。
戻ってきて。しんじ。
「れいな、大丈夫?ねぇねぇ。れいな?」
目が覚めたとき、そばにはくれあがいました。
「あぁ、よかった~。」
「しんじは?」
「しんじ・・・いなくなっちゃった。でも、さっきまでここにいたんだよ?」
うん、わかってる。
「どこいっちゃったのかなー、しんじのやつ。
わたし、ちょっと探してくるね?」
そういうと、部屋を飛び出していきました。
コンコンと、窓をつっつく音がしました。
振り向くと、あの美しい青い鳥が私をみつめていました。
ふっと、心に声が伝わってきました。
れいな姫、迎えに参りました。
その鳥の後を追っていくと、あのしんじと一緒にきた大事な場所へたどり着きました。
「ここは?」
青い鳥は、ぱたぱたと空を舞い、枝にちょこんとのりました。
「この傷。しんじの胸の傷。」
わたしが、いつもしんじの胸を触っていた、あの傷?
さーっと一陣の風が吹き抜けました。
「しんじ、こんなところでずっとわたしがくるのを待っていてくれたんだね。」
わたしは、涙がこぼれ落ちました。
「ずっとずっと一人で、寂しかったんだね。」
ぐすんぐすんと涙が止まりません。
「わたしの、ために、その傷・・・」
もう、えんえん泣いてしまいました。
すると、さっきまで枝にとまっていた鳥が、私の肩にちょこんとのりました。
チュッチュッとわたしに話しかけました。
「クレア、ありがとう。」
青い鳥は、羽で顔を隠しました。
「今、わたしがあなたを目覚めさせてあげるからね。」
わたしの王子様。
F I N
special thanks to reina
present by shinji