私達のみた海

私と彼が、この部屋で一緒に暮らして、4年がたとうとしている。
この部屋は都心から離れているが家賃もやすく、部屋の窓から海のみえる風景のいいところなのだ。
お互いまだ学生で親には内緒で同棲するにはちょうどよかったのかもしれない。
通勤には不便だと思うこともあるが、それでもここは私と彼との愛の巣、、、。
24歳になった私の周囲はなにやら結婚ブームで、招待状が次から次へとおくられてくるようになった。

「最近、結婚式の招待状が増えたね。みんないつのまにっていう感じだわ」
「そうだね。女の人にとっては一大イベントだからね」
「詩織は結婚したいのか?」
「稔は?」
「うーん。そのうち」
「わたしも、、。」

私も彼も今の生活に満足していた。
お互い仕事も私生活も充実していたし、結婚という形式にこだわらなくてもよかった。
すきだから一緒にいるそれでいいのだとおもう。
ただ、いつまでもこのままでいることなどできないのだ。
この部屋は賃貸なのでいつかは出なければならない。
もし、ここにずっといるつもりならば、買わなければならない。
半年後、この部屋の前に分譲住宅ができることになった。
朝、新聞を読んでいる彼にそのことを話した。

「詩織は引っ越したいのか?」
「稔は?」
「うーん。そのうち」
「わたしも、、。」

今日も窓の外から見える海の景色はさいこうだった。

フォローする