回想

・・・チッチッチッ
真夜中に目が覚めた。
時計の針が、はっきと時を刻むのがわかる。
「今何時?」
AM 4:00
時計をみると、ちょうど針は4時をさしていた。
「4時かぁ。」
しばらく、短針を通り過ぎる長針の動きを目で追った。
ふと、誰かが自分をみつめている気配を感じた。
「だれ?」
振り返ると、もう一人の自分がこちらを見つめていた。
「なんだ、鏡かぁ。」
その鏡は、ずっとこちらを覗き込んでいる。
「べーだ。」
鏡にあっかんべーをしてみた。
一瞬体中に悪寒が走った。
「さむーい。寝よっと。おやすみ、まーちゃん。」
ウサギのぬいぐるみを抱きしめて、布団の中にもぐりこんだ。
いつもならすぐに寝付けるのに、なぜか眠れない。
まだ、みられている気配が消えない。
「なんだろう?だれか、いるのかなぁ・・・」
そーっと、鏡の方をみた。
鏡の中には、私自身がまだこちらをのぞき込んでいた。

タスケテ・・・
鏡の中の私が、私に話しかけてきた。
「きゃぁ。」
体中が、固まったように動かない。
鏡から目を反らしたいのに。
布団の中でぶるぶると小刻みに震えている。
コワガラナイデ・・・
え?なに?どうなってるの?これは夢?
アナタトフタリデナラ・・・
一瞬見せた、もう一人の私優しい瞳を見つめていると、
少しだけ、震えがおさまった。
彼女は、ずっとこっちをみてる。
ぎゅっと、まーちゃんを握る腕に力が入る。
鏡の中の私は、こちらに向かって、指揮者のように指を動かし始めた。
タン・・タッタ・・タン・・♪
「く、苦しいよ。つばさちゃん。」
(もごもご)
え?え?まーちゃんどうしたの?えーーーーー????
「つばさちゃん、そんなに力いれちゃうと、ぼくつぶれちゃうよ。」
・・・
しばらくあっけにとられてた。
あ、そっか。やっぱりだ。これは夢だ。夢なんだ。
ほら、自分のほっぺたをつまんでみても、全然痛くないもん。
「つばさちゃん、どうしたの?」

「ねぇ、つばさちゃん、どうしたの?」
うさぎのまーちゃんが私に話しかけてきた。
こんなの普通じゃないもん。絶対違うもん。これは夢だもん。
少しだけ、ほっぺたが痛い気がするけど、気のせいだもん。
「つばさちゃん、あっちのつばさちゃんを助けてあげようよ。」
そういうと、まーちゃんはパチリと大きなウインクをしてみせた。
夢だもんね。なんだってできるんだよね。
「さ、いこうよ。ぼくがついてるから。」
夢だ夢だ。
いつのまにか、体から震えが消えていた。
でも、パジャマはびっしょり汗で濡れていた。
「どうしよっかなー。」
鏡の中の私は、まだ滑らかに指を操っていた。
「そうだ、まーちゃんはわかるでしょう?
鏡の中に写ってるのって、私だよね?」
「そう、あれはつばさちゃんだよ。」
なんか不思議な気分。
いつもは、気にもしないのに、鏡に映った自分が自由に動いている。
まるで、私自身を外から眺めているように・・・
「しょうがないなー、夢なら。私はどうしたらいいの?」
そういうと、鏡の中の私は、軽く微笑んだ。
カガミニカルクフレテ
私は、彼女のいうとおりに、鏡に手をふれた。
そうすると、ふれた部分からゆっくりと鏡の中へと入り込んでしまった。

きゃああああ・・・・
暗闇の中を、どこまでもどこまでも滑り落ちていってるみたい。
・・・・ぁぁあああああ
ドシン。
「痛っててて。」
ずいぶん高いところから落ちてきたように思えたけど、
助かったみたい。
「ふぅ。」
「おい、ふぅ、じゃねーよ。いつまでオラの上に乗ってるつもりだ?」
「え?」
私の下敷きになってる髭の濃いおじさんが、しかめっ面で私をみていた。
「きゃっ、ごめんなさい。」
私は、立ち上がり、ぺこりとお辞儀をした。
「あ?どうしたんだ?おめぇ。女みたいな声出して。」
少しおなかが出ているかっぷくのよいおじさんは、
パンパンと、ズボンについた砂埃を落としている。
「ねぼけてんのか?」
しょうがねぇなぁと、おじさんは熱い飲み物を入れてくれた。
ここは、どこだろう?
蝋燭が一本、燭台の上に置かれている。
窓の外は、暗闇に飲み込まれて、真っ暗で何にも見えない。
この部屋にあるものといえば、木製の二段ベッドと、壊れそうな木の机、
あとは、ヘミングウェイの『老人と海』の中にでてくるおじいさんが座ってそうな椅子。
あ、あっちには使われていない暖炉もあった。
そして、壁に大きな地図?絵?(みたこともない地形だな)が掛けられていた。
部屋中から、木の温もりが伝わってくる。
「おめぇ、さっきからなにきょろきょろしてるんだ?」
おじさんは、髭をなでながら、私の動きを見つめていた。
「あ、ごめんなさい。」
ふぅふぅしながら、ホットミルクを口に流し込んだ。
「なんだか、いつもと違うが、ベッドから落ちておかしくなったべか?」
あれ、このおじさん私のこと知ってるのかなぁ?

「おじさん、私のことしってるの?」
・・・
「はぁ?おめぇ何ゆってんだ?ほんとに、ベッドから落ちて頭でもいかれたか?」
しばらく沈黙の後、
「そういえば、おめぇのことほとんどしらねぇなぁ。
おめぇ、自分のことあまり話したりしねぇもんな。」
彼は、しばらく考え込み、
「そうだ、じいさまに聞いてみよう。
あの人なら、おめぇを元に戻してくれるかもしんねぇ。」
そういって、隣の部屋の扉を軽くノックした。
「おい、じいさま、起きてるか?
すまねぇが、起きてたらちょっとでてきてくれ。」

「おい、じさま。」
ぎぃぃ・・・と扉がゆっくり開くと、
中から年老いたおじいさんと、赤ずきんをかぶった小さな女の子がでてきた。
「なんじゃ、せっかくサリーが寝かけていたのに。」
そういうと、そばにいる小さな女の子に目を移した。
サリーとよばれた女の子は、目をこすりこすりして、こちらをうかがっている。
「どしたの?あんたたち。」
「いや、リュウのやつがよ、ベッドから落ちて頭いかれちまったみてぇなんだ。」
そういうと、おじいさんは私の方をみた。
「おい、ゴンザ、おまえがなんかしたんじゃないあるまいな?」
タン、タン、と軽いリズムで私の方に近づいてきた。
「どれ、ひとつあの魔法でもかけてみるか。」
何かひそひそと唱えている。
「むむむむ・・・はぁー!」
手を私の頭に向けて、大きく気を発した(ように思えた)。
「例のあの魔法か?じいさん、リュウは治ったか?」
ゴンザがおどおどしながら、様子をうかがっている。
「あんた、馬鹿ねー。じいちゃんが失敗なんかするわけないでしょ?」
サリーがうそぶいた。
「はて、おぬしの気分はどうじゃ?」

「リュウよ、少しは気分が治ったか?」
私は、別段何も変わったようには思えない。
「いいえ。」
おじいさんは、むむむ、と考え込んでいる。
「これは、重傷かもしれん、いや、もしかしてあやつがきたのか?」
一瞬あたりは水を打ったように静まりかえった。
「じいさん、あやつって、まさか、あの?」
ゴンザが不安そうに下をむいた。
「だって、あの占いによると、私たちが七人そろうまで、
あいつには気づかれないって・・・」
サリーが、ぶるぶる震えている。
「そうじゃが、リュウのこの様子、ただごとではないぞ。」
私には、何がなんだかさっぱりだ。
「心配するな、あやつがきても、ワシの魔法で退治してくれるわ。」
わっはっは、とおじいさんが笑っている。
「無理するな、じいさまの魔法は回復系のはずだべ?
攻撃系は、これから仲間になるはずのだれかだべ。」
ゴンザは、ちょっとだけ余裕の笑みを浮かべて見せた。
「い、いざとなったら、わたしだって、必殺技を使ってみせるから。」
サリーも、強がって見せた。
「あやつって、誰のことなんですか?」

「ゴンザ、今すぐとなり町のコペットばあさんを連れてきてくれ。」
おじいさんは、ゴンザに怒鳴りつけた。
「ん?わかった。行って来る。」
どたどた重い体を揺らしながら、扉をはねのけて出ていった。
サリーとおじいさんが冷めた目で私をみている。
隣の部屋から、静かに男の人が現れた。
「どうしたんですか?こんな夜中に。」
「マスター、こやつ・・・」
そういうと、まじまじと私の顔をみて、
「資格を失ってしまったのかもしれん。」
「ほわっと?それはどういうことでしょう?」
彼は、どっかりと椅子に座り、おじいさんに説明を受けている。
「おー、りありぃ?それは妙ですね。早くコペットさんにみてもらわないと。」
マスターといわれた男は、私に「心配しなくてもいいですヨ」と笑っている。
「こいつ、ほんとにリュウ兄ちゃんなのかなぁ?」
サリーが私にむかって、冷たい視線を送り続けている。
「んむむ。しかし、こやつは胸にあれをぶら下げとる。」
そういうと、私の胸にぶら下がっているお守り袋を指さした。
「すまぬが、その中身を出してもらえんじゃろか?」
むむむ、とおじいさんは考え込んでいる。
「これですか?」
私は、お守り袋の口を開いて、中に入っていたものを取り出した。

お守り袋の中から、紫がかった小さな宝石がでてきた。
「サファイア。本物だ。」
マスターが、遠目から宝石を確認した。
「んむむむ。どうやら本物のようじゃ。しかも、こやつの石はかなり上物。」
そういうと、やっと私をみる目が変わった。
「なにがなんだかわからないんですけど・・・。」
「おぬしは、あやつのことも忘れてしまったのか?
あんな恐ろしい『あやつ』のことを。しかし・・・
おぬしがいなければ選ばれし戦士としての力をはっきできぬやもしれぬな。」
そういうと、おじいさんは、静かにはなし始めた。

あれは、今から10年前の話。
東の国、留皆『ルミナ』に、ザイン=ダルトディヒという悪魔が現れたのじゃ。
こやつは、国を乗っ取るために、その国の姫、レイナ姫を眠りにつかせた。
そして、きゃつは、ルミナの王に、国を明け渡すように命じたのじゃ。
近隣諸国は、すでにザイン討伐隊を編成し、討ち取りに向かったのじゃが・・・
とうとう滅ぼされてしまった。
そこで、現れたのが、伝説の勇者、名は伝えられておらぬが、
彼は、二人のお供と見事ザインを倒すことに成功した。
それから、東の国は、暗闇から開放され、姫も眠りから覚め、
平和な時代が訪れたわけじゃ。
しかし、平和はそんなに長く続くわけはなかった。
次に、北の国、ヤクナに災いが訪れ始めた。
ザインの意志がまだ残っていたのじゃ。
きゃつは、今まで以上にこの国に災いをもたらそうとしている。
西の国、トウナは、すでにやつにやられてしまったと聞く。
トウナの国の王も、たぶん、もはや生きてはおらぬじゃろう。
しかし、きゃつを倒す手段が、たった一つ残っていたのじゃ。
それが、おぬしが手にしている石。
それは、あの伝説の勇者様が一度はきゃつをしとめた時に使われた、
伝説の石でもあるのじゃ。
そして、その石は、きゃつとの戦いで七つに砕けてしまっての。
その七つの石を受け継いだもの、それがおぬしであり、わしとゴンザとサリー、
そして、マスターなのじゃ。

え?わたしが何?よくわかんないんだけどなー。
それにしても、ここどこだろう。
「むむむ。」
おじいさんは、さっきから考え込んでるみたい。
ふぅ。それにしても、何か忘れてる気がするのよねー。
なんだったかなぁ。
遠くから、ドタドタ走ってくる音が聞こえた。
「はぁはぁはぁ。じいさん、つれてきたよ!」
そういうと、ゴンザの背中には、年老いたおばあさんが乗っていた。
「こりゃ!早くおろさんか。年寄り扱いするな!」
ばちん、とゴンザは頭をたたかれてた。
「イテテッ、だってよー、早くつれてこなきゃいけないだもんなー。」
「むむむ。」
おばあさんは、ゴンザの背中から飛び降りると、
ゆっくりと部屋の中に入ってきた。
「なんの用じゃ?こんな夜中に。」
「うむ、ばあさん、ちょっとこいつをみてもらいたいんじゃが。」
そういうと、おばあさんは、おじいさんの方をキッと睨んで、
「あんたに婆さん呼ばわりされる覚えはないわい。
この老いぼれめ。」
そういわれて、おじいさんはちょっとシュンとしてる。
「なんじゃ、このかわいい坊や。このこがどうかしたのかえ?」
そういうと、よたよたしながら、おばあさんは、私に近づいてきました。
「ちょっと、目をみせてごらん。」
おばあさんは、優しく私の頬にふれました。
「いい目をしておる。ん?」
そういうと、おばあさんは踵を返し、部屋の中を歩き回り始めました。
「まざっとる。」
「え?なになに?」
「坊や、あんたラビトじゃな。」
一瞬、あたりがシーンとなった。
「え?らびっと?何それ。」
「ほわっと?ばあさん、本当なのか?」
そういうと、おばあさんはマスターに一発かまして、
「あほ、わしが嘘でもゆっておるというのか?
この坊やは、ラビトじゃ、間違いない。ただ・・・」
「ただ?」
「まだ、完全じゃない。」

「坊やはラビトじゃ。」
その一言から、周りの視線が変わった。
「なに、リュウがラビトだと?
こいつが天帝に選ばれた王の血筋だというのか?」
だーかーらー、あなたたちさっきから何の話してるのよ!
「ユーの運命、いや宿命なのかもしれないな。」
マスターが、険しい顔をしている。
ただ、サリーだけは、ぽかんと口をあけてはてなマークが頭の上にいっぱいでてた。
「ねぇ、おじいちゃん。ラビトってなあに?」
「うむむ。ラビトとはな、古代より伝わる伝説の勇者、
コンクリックの子孫で、この国をお作りになさった王様じゃ。」
また、おじいさんが話し始めた。
おじいさんの話って、長い割によくわからないんだけどなー。

昔々、天と海を治むる神々、
鳳王と竜王がこの世界を二分なさっていたのじゃ。
鳳王は、空に天空城を作り、
竜王は、海に竜宮城を造り、
すべてのみなもととなっていたのじゃ。
しかし、鳳王が、一滴の欠片を海に落としてしまわれた。
それにより、海がけがされたしまったのじゃ。
それに激怒した竜王は、空に昇り、鳳王に戦いを挑んだのじゃ。
海は荒れ、生き物はすでに何もなく、
竜宮城は、無惨にも朽ち果ててしまった。
鳳王と竜王との戦いは、数千年にも及んだ。
このままでは、決着がつかない。
そこで、鳳王は、自分の体を切り離し、
海に投げ込んだのじゃ。
そこに、新たに大地が生まれ、そこから生まれた王、
それが、コンクリックと呼ばれる者じゃ。
彼は、鳳王と竜王との間に入り、
忌まわしい恨みを断ち切ったという。
それ以来、鳳王と竜王の姿をみたものは誰もいない。
この大陸は、そのときの戦いによりできたものときく。

「これは、ただのおとぎ話だと思っておったが。。。」
おじいさんは、相変わらず、むむむ、と考え込んでる。
「あ、ミーもその話を聞いたことがある。
そのあと、勇者コンクリックは、身に付いた鳳王と竜王の血を洗いながすために、
何年も聖地イズミナで、体を清めたという。」
へー。勇者コンクリックねぇ。
「そのとき身につけていたものが、伝説の武具として、
各地にまつられているという噂を聞いたことがあるのじゃが。」
「おじいちゃん、じゃあ、リュウがその伝説のコンクリックの・・・
何なの?」
サリーが、鋭いところをついた。
「むむむ、じゃから・・・なんじゃのう?」
ちらっと、おばあさんに助けを求めた。
「だからの、この坊やが、そのコンクリックの血を引く者、
ということになると思うんじゃが・・・」
だんだん、話がおっきくなっていくなぁ。

「ようようようよう、なんだか、話がもりあがってるとこわるいんだが、
俺様も仲間にいれてくれねーか?」
扉の方に見知らぬ男性がたっていた。
「むむ、おぬし何やつ?」
「おれさまか?おれさまは、海の王、キャプテンジャックさまよ。」
ゴンザが「あ」っという顔をした。
「おうおう、おめぇ、おれさまのこと知ってるとみた。
いやー助かったぜ。こんな田舎町にきてよ、
さすがにおれさまの名前を知らないやつばかりだと、
やる気もなくなっちまうってもんだ。な、そうだろ?」
荒々しい男は、「わっはっはっ」と、大笑いしている。
「ジャックって、あの紅国を作ったという、あのジャック?」
サリーが、ちょっと嬉しそうにほほえんだ。
「おうおう、おじょうちゃん、よくしってるじゃねぇか。
おれさまの知名度もこれだけあれば上等よ。
まぁ、おまえたちも俺様がきたら百人力よ。
ザインの生き残りだかなんだかしらねぇが、退治してくれるわ。」

ジャックが大笑いしてると、暗闇から月が現れた。
「おう、俺様がきたとたんに月がでるたぁ、なんだかめでてぇじゃねぇか。
なぁ!」
そういうと、ゴンザの背中をバンバンたたいた。
ごほごほ、とゴンザはちょっとむせてる。
「で?仲間はこれだけか?ま、俺様がいれば、ほかにはいらねーがな。」
ワオオォォォォ・・・・ン
「ち、こんないなかにゃ山犬が多そうだなー。」
「むむむ。」
わたしの出番なんて、まるでないわね。
なに、この状況。もう、ついてけないわ。
ワォォォォ・・・ン
「なんか、遠吠えが近づいてこねぇか?」
ジャックのいうとおり、遠吠えがだんだん近づいてきてる。
「ノープロブレム、私がなんとかしましょう。」
マスターが、外にでようとしたとたん、
「おいおい、にーちゃん、ここは俺様の出番だろ?
安心しろよ、ちょっくら片づけてきてやるから。」
そういうと、ジャックがマスターを制して外にでていった。
 いってー、なにしやがんだ、こんちくしょう!
 はなしやがれ、おい、くそっ!
「なんだか、やられてんじゃないの?」
サリーが心配そうな顔をした。
「たく、しょうがないわ。小僧め、わしが力をかしてやるかの。」
おじいさんは、ちょっと威厳をみせようと扉の外にでようとした。
「ったく、こいつも選ばれたやつらしいぞ。」
そういうと、狼男がジャック後ろから入ってきた。
「狼男!」
わたしは、思わず叫んでしまった。
「はじめまして、私はウルム。あなたたちと同じ石をもっています。」

「ほぉ、半獣か。」
おばあさんが、まじまじと狼男の顔をみた。
「なかなか、強い意志を持ってるようじゃの。」
「むむむ。これで7人全員そろったということか。
さて、これからどうするかの。」
「決まってるだろう?海にでるんだよ。紅海から東国を回って、
黒海にでて、やつのいる城までいっきに突入よ!」
ジャックは、力こぶをみせてにんまりしてる。
「じゃが、そんなに簡単にきゃつを倒せるかのぅ。。。」
おじいさんは、いぶかしげだ。
「じゃあ、わしゃこれで失礼するよ。」
おばあさんは、ゴンザに合図をすると、部屋からでていった。
「ばあさんや、すまんかったな、こんな夜中に。」
びゅんと雷がおじいさんに落ちた。
「いいか、おいぼれ。次にこんなことでわしを呼ぶときは、
もう少し気の利いたやつを使いによこしな。」
ゴンザは申し訳なさそうに、おばあさんを背中にのせた。
「ふー、なんだかばあさんも戦力になりそうだったなぁ。」
なぁおいと、ジャックがマスターに話しかけている。
マスターは、隣でうんうんと頷いていた。

帰り道・・・
「なぁ、ばあさま、申し訳ねぇだ。」
ゴンザは森の中を駆け抜けていた。
「まぁ、しかたあるまい。おぬしたちにも事情があるのじゃろ。」
そういうと、ゴンザはちょっと安心した。
七つの星が、月の光を浴び、巨大なる悪を倒す。
夢は、現実に、現実は、夢に。
世界はそこから始まり、そして、終わりに向かう。
行き交う命。
本来あるべき場所は何処へ。
巨星、海に沈む。
「ばあさま?なんだべ?その詩は。」
「うむ、おぬしたちから感じた詩じゃ。」
「それって、おらたちが、世界を救うってことか?」
「早とちりするでない。あくまで詩じゃ。」
おばあさんは、少しだけ笑みを浮かべていた。
「よし、ここでよい。後は歩いて帰れるわ。」
「ん。すまなんだ。それじゃ。」
ゴンザは、大急ぎで帰っていった。
「それにしても、あそこに二人もラビトがいるとは。。。」
おばあさんは、夜風にあたりながらつぶやいた。
新しい伝説が、始まるのじゃろ。

回想Ⅱへ続く

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