気がつくと、私はベッドの上に寝かされていました。
だれもいない部屋。
私は、たしか、、、記憶がないです。
そういえば、変な夢をみていました。ちょっとした夢。
少年と、、、遊んでいました。
そこでは、私はすごく頭が働いてて、とても力があふれているような感じでした。
そう、とても。。。
私は、夢の中で、ゆーかと呼ばれていました。
え、そういえば、私って、なんていう名前だっけ?
ここは、どこ?私は、、、
まわりを見渡しました。みたことがありません。
小さな窓が一つあるだけです。でも、景色はみえません。
窓の向こうも、壁があります。ただ、白い部屋です。
壁も白い。でも、窓がある。不思議な部屋でした。
扉は、、、あります。ちょうど、カーテンで隠れていました。
あきません。びくともしません。これも、壁のような気がします。
音もなりません。すごくすごく頑丈です。
しかたがないので、ベッドの上に座っていました。
ほかになにもすることがないんです。
しばらく寝ていました。しばらく?・・・どのくらい寝たのかもわかりません。
ずっと明るいので、時間の感覚がまったくありません。
本当にねてたのかな。。。
感覚が、まるで夢の中にいるようです。とぼうと思えばとべるし、壁を歩こうと思えば、、、歩ける?
壁をたたいてみました。でも、ここだけは夢のようにうまくいきません。
びくともしません。しかたないので、ベッドに戻りました。
ただ、ちょっとだけ耳が痛いです。
ずいぶん時間がたったと思います。どのくらい進んでるのかよくわからないので、
数字を口にすることにしました。唯一聞こえる音です。ただ、本当に発音できてるかはわかりません。
1、2、3・・・34、35、36・・・213、214、215・・・1342、1343、1344・・・
・・・
どのくらい数えたんだっけ。そう、たしか4345654までだったな。
で、次は、4ひゃく、、、うー、わかんない。忘れちゃった。
でも、これだけ数えたの、どのくらいかなぁ?
えっと、4ひゃくまんを、60で割って、えっと、えっと・・・
4じゅうまんを、6で割ればいいんだから、えっと・・・
40を6でわって、、、6とちょっとだから、えっと、えっと、、、6まんとちょっと!
で、それが分だから、今度は時間になおして、、、また、60か・・・
今度は簡単。6を60でわるから、10分の1か。だから、、、6000とちょっと。
あと、最後に日数だから。。。えと、あ、1にちは、24で・・
そうだ、めんどうだから、20で、、っと、、、600と2で、、、300か。
300!?
ということは、300日もいるってこと?300日も、、、なにもない。。。
ああ、あれから、途方もない時間がすぎていると思います。
もう、数字を数えるのがいやになりました。どうやって考えていたらいいのかわかりません。
むしょうに、自分を傷つけたくなりました。どんな風になってもいい。
そこで、とりあえず、指を間接と反対がわにまげてみました。へんな音がします。
「痛いっ」
思わず、叫んでいました。ああ、生きてる。
こんなことでしか、自分の存在が確認できないのです。
すごく、悲しくなりました。。。
目から、暖かいものが流れています。この感触も久しぶりです。。。
・・か、・・ゆーか、ゆーか・・・
私の名前を呼ぶ声が聞こえました。私、私はやっぱりゆーかという名前。
夢?現実?もう、なにがなんだか区別がつきません。
でも、その子は以前みたことがあるこでした。私は呼ばれていました。
あの子に、、、あいにいかなきゃ。あのこに、、、会いたい。
あいたい。。。
そう思っていると、壁に色がつきはじめました。部屋の広さも、大きくなっているようです。
しばらくすると、そこは、もう部屋の中ではありませんでした。
そこは、、、もう、、、別世界でした。
部屋の中は、いや、色がついた部屋は、今度は真っ暗でした。
真っ暗。暗闇の中にいるような感じです。前からしっているのかどうか、まったくわからない。
初めての暗闇?もしかして、私は生きていないんじゃ?
以前考えていた思いが、再びこみ上げてきました。
私は、本当にいきているんだろうか?私という人は本当に存在するのか?
私が、考えている、私って、、、
私が、痛いと思ってきたのは、ただ頭の中で考えているだけで、本当は痛くもなんともなかったんじゃ。。。
そんなことばかりが頭の中に広がっています。
どうしようもない恐怖がうまれてきました。
長い間、きっと長い間あの明るい部屋にいたのに、そこまで思わなかった。
でも、この暗闇の中に自分の存在を探そうと思うと、とても絶えられなくなりました。
どうしようもなく、怖いんです。
あの少年は、もしかして、私を苦しめている人なのかもしれません。。。
昔、、、といっても、どのくらい昔かわかりません。
ちっちゃいとき。そう、私が自分のことを人だと思っている記憶の中で、
とても小さい時に、私は、近所の子にこんなお話をされました。
それは、、、
「人はね、しんじゃうとまっくらな世界に連れて行かれるんだよ。そこには、鬼がいるんだ。
でも、鬼は何もしないんだよ。ただ、じーっと死んだ人を眺めているだけ。
しんじゃった人は、まわりにいっぱいいるんだけどね。鬼は、、、見てるだけなんだよ。
鬼ってさ、怖いイメージがあるでしょ?でもね、本当はそんなに悪くはないんだよ。
ただ、いつまでもじーっとみつめてるだけ。それが普通の人には耐えられないんだよ。
しばらくすると、しんじゃった人がね、おなかすいてきちゃうんだ。
しんでるのに、おかしいでしょ。でもね、すっごくすっごくおなかすいちゃうんだよ。
そしたら、真っ暗な世界だから、しんじゃった人には、まわりに同じような人がいるとかわからないんだ。
そこで、とりあえず、近くにいる人どうしが、お互いを食べようとするんだ。
おなかがいっぱいになったからって、安心はできないんだよ。だって、おなかすいてる人は、いっぱいいるんだから。
そうすると、どんどん数がへってきちゃうでしょ。
あっという間に、一人ぼっちになっちゃうの。鬼にながめられてるだけで。
そして、最後には、自分で自分の体を食べちゃうんだ。そして、自分をけしちゃうの。
だからね、人が暗闇が怖いのは、誰かに襲われてもわからないからなんだよ。」
こんな私の姿を、きっとみつめているあの少年は、鬼と呼んだほうがいいと思いました。
私にも、ちょっとした恐怖があります。鬼の話で思い出しました。
私は、何もたべていません。まったくおなかがすかないのです。
すごく不思議になりました。もしかしたら、自分の体すらもうないんじゃないかって。
でも、以前、どのくらい前でしょう、真っ白な部屋の中にずっといたときも、
ほとんどおなかがすきませんでした。あのときは、体がちゃんと在るようにみえたので、
自分で自分を食べているとは思えません。
もしかして、長いと思っている時間は、ほんとはすっごく短い世界。
もしくは、これこそが夢の中なのかも、、、そう思うようになりました。
そう意識をすると、突然暗闇の雰囲気がかわってきました。
しばらくすると、また、最初の真っ白い部屋に戻りました。でも、今度は辺りに人がいます。
一瞬自分の目を疑いました。
たしかに、そこには人がいます。でも、だれも動いていないのです。
まるで人形のように。
わたしは、、、ずっと一人きりなのかもしれません。
少し悲しくなりました。
なぜか、夢の続きをみたく感じました。
あの夢の中では、わたしはいじめられています。
でも、今の気分よりはくらべものになりません。
だれか、わたしをたすけてください。
だれか、、、おねがい。。。
ふと、あることに気がつきました。
コーヒーをいれている人、コーヒーが、、、グラスにそそがれているところ。
なぜか不自然。
人間が動かないだけならわかる。けど、、、重力にさからってる?
わたし以外すべてが動いてないのならわかる。
でも、さっきより微妙にそそがれている量が違う。
もしかして、これは、わたしの意識よりもすごく遅い時間なのかもしれない。
意識が、おかしい。
この人たちと同じ早さの意識になれば、
そうすれば、もう私は、一人じゃない。
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