続 きみといた日々

~ 続 きみといた日々 ~

たいせつなものをみつけたんだ。
それは、ぼくにとってのたからもの。
きみのなかにみつけた。
そう、それは「きみ」だよ。
ぼくのなかに、もう、きみがいる。
いつまでもわすれないよ。

きみの病気の事を聞いても、実感がわかなかった。
だって、きみはいつもと同じようにぼくに笑顔をみせてくれたから。
そう、今だって、きみはぼくのなかにこんなにも大きく写っているのに。
きみがきみでなくなるなんて。
きみは、まだぼくのことを好きでいてくれるかい?

医者はね、きみが今のままでいられるのもあと少しだってゆったんだ。
だんだんと、病がきみの体を蝕んでいくんだって。
ぼくの体をきみと交換できたなら、どんなにいいだろう。
でも、きみはきっと拒むんだろうね。
だって、きみもぼくが傷つくことをどんなにも悲しく感じてしまうから。

いつからだろう、きみとふたりで過ごす時間が増えたのって。
初めてのデートのこと、覚えてるかい?
きみは、待ち合わせの時間にちょっと遅れてきたよね。
ちょっと怒ったふりをしたぼくの顔をきみは覗き込んで、
「ごめんね」ってゆったよね。
そのときの困った顔が、とっても可愛くみえたんだ。
あのときから、ぼくの中できみはとても大きな存在になったんだよ。

きみは、だれにでも優しいから、ぼくは不安だったんだ。
デートに誘うときも、ぼくはきみが本気かどうかわからなかったんだよ。
いつだって、きみのまわりには人がいて、
そこには笑顔があふれていたから。
ぼくが、きみを笑顔にしてあげられるのかなって。
でも、きみはそんな不安をすぐに消してくれたんだ。
だって、きみはぼくだけの「きみ」になってくれたから。

いくつの夜をきみと過ごしただろう。
昼も夜も離れずに、きみのそばにいたぼくは、
今も変わらずきみのそばにいるよ。
忘れないと誓った思い出たち。
今でもぼくの中で生きているんだよ。
うん、きみの中でもきっと生きているはずだよ。
あんなにも一体となったぼくたちだから。
そうだろう?
だから、ほら。ぼくをみてむかしのように微笑んでおくれ。
あのときと同じように。

「おにいちゃん、どうしてそんな悲しそうな顔してるの?」
そんなことないよ、そう返事をしようと思ったんだけど、
言葉がでてことなかった。
ぼくは首を大きく振り自分に言い聞かせた。
ぼくがこんなんでどうするんだ、
彼女がどんな病気でも彼女なんだ、と。
愛する気持ちが大きくなればなるほど、
失う悲しみに耐えられそうになかった。

ぼくは、きみの妹にきみの影を追っていた。
もう、出会った頃のきみと同じくらいの年頃になったね。
あのころから、ぼくたちの人生が重なっていったんだ。
話し方も、ちょっとしたしぐささえも、
ぼくは一つも洩らさず拾い上げていったんだ。
あの頃のきみを、ぼくはそこに見ていたから。
そして、最後に気づく。
ぼくは、やっぱりきみが好き。

きみが動物や子供が好きだから、
ぼくもいつのまにか好きになった。
きみがお花を生けるのを、ぼくは横でみていた。
部屋の中が明るくなった。
今も、きみの部屋にはぼくの大好きな、
そしてきみが一番好きなお花が飾られている。
きみは、覚えているかい?

天気がいい日は、ぼくはきみを外に連れ出した。
できるだけ、お花がいっぱいあるところへきみをつれて行きたかったんだ。
だって、いつも退屈そうに部屋の中にいるからね。
窓から眺める景色よりも、
直接手で触れるほうがいいだろう?
ほら、ここをみてごらん。
ぼくたちが植えた種が芽を出しているよ。
無邪気に笑っている彼女を、ぼくは忘れない。

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