きみといた日々

~ きみといた日々 ~

たいせつなものをみつけたんだ。
それは、ぼくにとってのたからもの。
きみのなかにみつけた。
そう、それは「きみ」だよ。
ぼくのなかに、もう、きみがいる。
いつまでもわすれないよ。

うすれゆく記憶のなかで、きみのことを思い出す。
自分の記憶が、自分のものでなくなるような、
そんな瞬間。
それでも、ぼくはきみのことを忘れない。
もし、忘れることがあるなら、
そんなときは、いっそ・・・
きみのことを思いながら、ぼくはこの世に別れを告げるよ。

ぼくの目は、いつも冷たかった。
きみは、いつも暖かく見つめてくれてたね。
そんなとき、つめたいかべをこえ、
暖かいぬくもりがぼくの中にはいってくるんだ。
とても心地よいぬくもりが。

1年365日、いつもきみとおしゃべりしたね。
毎日が、あんなにも楽しいものだとは思わなかった。
すべてが夢の中のように、
なんでもできると思えたんだ。
ずっときみのことだけを考えて。

1日中時計の針をみていたんだ。
時計の針って、一周するのにこんなにも時間がかかっていたんだね。
それは、限りなく、無の世界が広がっていくように。
ゆっくりゆっくり、まわっていくんだ。
きみといたときは、あんなにも早く時は流れていったのにね。

きみの笑顔の一つ一つを思い出すんだ。
ぼくの胸の奥が、ぎゅっとしめつけられて、
苦しくなってた。
昔に戻れたらって人はいうけど、
もし本当に戻れるなら、きみといた日々に戻りたい。
そう、きみといた日々に。

怖いよ。怖い。
ぼくの中の何かが音を立てて崩れていくように、
僕の中の大切なものが、消えていくんだ。
少しずつ、ぼくときみとの大事なものが、なくなっていく。
ねぇ、どうしたらいいの?
ぼくは、きみのこと忘れたくないよ。
この記憶だけは・・・
ねぇ。だれか助けて。
だれか。

「ねー、わたしのこと一番好き?」と聞くあのこ。
少しじらしてみると、不安そうな顔をする。
そっと手を重ねてぼくをみつめるきみ。
その顔がとてもいじらしくて、そっと抱きしめた。
そのぬくもりがいまも心に残ってる。

ほかの子と遊んでもいいよ、という。
そうなんだ、とぼくはうけとめてた。
だからって、遊んだりはしない。
あとから知ったんだ。
あのこは、本当はそんなことしてほしくないって思ってたこと。
ぼくのこと、すごく好きでいてくれたんだね。

多くのことのぞんでるわけじゃないんだ。
たったひとつだけだよ。
きみがいてくれれば、それでいい。
そんな気持ちをうまく伝えられなくて、
きみをいっぱい傷つけてしまったね。
ぼくは、そろそろ眠るね。

静かだね
窓の外
ガラス一枚で、ぼくたちの世界は全く違うんだ。
この一枚が、ぼくたち二人の邪魔をする。
ぼくのいる場所。
きみのいる場所。
もう、戻れないんだね。
もう、さよならなんだね。
あそこに咲いている花。
あの空に浮かぶ雲。
ぼくには、もうふれることができないんだね。
でも、きみはなんでもできるんだよ。
寂しがらないでね。
悲しまないでね。
ぼくがいなくなっても、きみのそばにはぼくがいるんだよ。
このからだは消えてなくなっても、
きみのそばに新しい息吹が、花が、緑が愛でるんだ。
それは、ぼくなんだ。
いつも見守ってるよ。

からだが重くなってきた。
もう、自分のからだじゃないんだね。
いままでどうやって動かしていたのかさえ、わからなくなってきた。
もう、どのくらい横になったままなんだろう。
いつからぼくのへやからカレンダーがなくなったんだろう。
時計すらないんだよ。
もう、今日がいつかさえわからないんだ。
それは、とても孤独を感じるものなんだ。
すごく怖いと思ったよ。
だんだん、自分が自分でなくなるような気がしたんだ。
ぼくを支えてくれたのは、きみだよ。

なんでだろう。
涙がこぼれてきた。
泣いちゃだめだって思ってるのに、とまらない。
ぼく、ほんとうは怖いんだ。
もう、きみの顔みれないと思うと、
もう、きみのぬくもりを感じられないと思うと、
怖くて、悲しくて、
涙がいっぱいあふれてきちゃうんだ。
へへ。
きみに心配させちゃいけないと思ってるのに、
どうしようもないんだ。
そんな顔しないで。
きみまで泣いたら、ぼくは・・・
ありがとう。

にっこり笑ってくれたその顔が、
ぼくのすべてにこたえてくれた。
はじめてきみがみせてくれた笑顔。
変わらない愛のように。
きみのなかで、ねむりにつくよ。
あたたかいね。
あたたかい。

あたたかいしずくが、ぼくをぬらした。
それは、ぼくのだいじなものを、大切に守ってくれるような気がした。

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